抄録
1. 著者等は本邦に於て一般陶磁器燒成に伴ふ製品の歪曲現象に就て從來何等の基礎的研究の發表をも見ない事を遺憾とし更に本邦陶磁器製品の品質改良に對する根本的研究事項としての本研究の重要性と其學術的意義並に研究方針及び研究細目等に就て説明した。
2. 釉に因る素地の歪曲現象が陶磁器の最も重要問題である釉の缺陷即ち釉の龜裂及び剥裂の現象と全く不可分的の密接な關係にある事を指摘し其等釉と素地との不調和に基く内力が單に釉の缺陷を生ずるのみならず其等現象の發生以前に於て既に製品の彈性變形に伴ふ歪曲現象の必ず存在する事を説明し學術的見地から見た其等の現象の相互關係に就ての一般的解説を試みた。
3. 陶磁器燒成中に起る内力の判定法として著者等は釉及び素地の熱膨脹率, 彈性率及び歪曲度等を個々に求めて其等の結果から判定する事並に双金屬の屈曲理論並に理論式に從つて計算する事の最も妥當な事に就て説明した。
4. 陶磁器の歪曲現象に就ての基本歪曲理論式は双金屬の屈曲理論と同樣な理論に基く數學的解析によつて誘導し得らるゝ事を説明し更に著者等が實驗によつて測定した歪曲度δに對する理論的解析として釉及び素地の厚さ, 熱膨脹率, 彈性率, 試驗片の長さ及び冷却温度差等との關係式を呈示した。