本論文は自己硬化性リン酸カルシウム接合剤 (CPC) に関する最近の研究を概観したものである. 接合剤の硬化反応, その生成物, 生成物が接合剤の性質に与える影響及びCPCの生体内の特性について集中的に検討する. 数種類の混合物系で接合は可能であるが, 現時点の文献データの示唆するところによれば, リン酸四カルシウムとリン酸二カルシウム (あるいはリン酸二カルシウム二水和物) の混合物が比較的に高い強度とほぼ純粋に近い水酸アパタイトを含む接合体を生成するので, 最も望ましい. CPCの強度はセラミック化したリン酸カルシウム生体材料よりかなり低く, またいくつかの歯科用接合剤よりも低い. その一方で, 自己硬化能と高い生体互換性が結び付いた結果, CPCは特異な生体材料と言える. 接合剤の損傷した生体組織表面へのほとんど完全に近い適合性と最適の吸収速度-これが後で新しい骨の生成に引きつがれるのであるが-はCPCの明白な利点である. 現状でもCPCは若干の実際的応用に適していると思われる. 種々の実際的応用に対する要請に適合すべくその特性を更に向上するために, なすべき多くのことが残っている.