われわれは歩行開始困難で発症した前頭蓋窩硬膜動静脈瘤の1例を経験した.症例は44歳,男性で,一過性のすくみ足を生じるようになった.脳血管障害を疑われ当施設へ紹介された.CT,MRIでは器質的異常は認められなかったが,脳血流シンチ(SPECT)では両側前頭葉の脳血流が低下していた.脳血管撮影では右前節骨動脈を流入動脈とする硬膜動静脈瘤を認めた.動静脈瘤の閉鎖を施行すると,歩行開始困難は消失し,SPECT上も脳血流低下は改善した.前頭蓋窩硬膜動静脈瘤は出血後に診断されることが多く,本例のようにすくみ足で発症することは稀である.歩行開始困難は静脈うっ血による脳血流障害が原因であると考えられた.