脳神経外科ジャーナル
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悪性脳腫瘍に対する放射線治療(標準治療と最新動向)
宮武 伸一
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2006 年 15 巻 1 号 p. 10-18

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抄録

悪性脳腫瘍, ことにグリオーマに対する放射線治療は, 標準的治療として1日1回2 Gy, 総線量60 Gyの光子線(X線もしくはγ線)分割照射が確立されている.しかしながら, グリオブラストーマに話を限ると, 術後この標準的放射線治療を行っても, 平均生存期間は9〜12カ月であり, 画像上の奏功率(50%以上の造影域の縮小)は23%に過ぎず, 満足すべき状況とは決していえないのが現状である.本稿ではこの治療成績を踏まえて, 最近の治療法を4種類紹介する.Micro multi-leaf collimatorを用いたstereotactic conformal radiotherapyは, 従来のガンマもしくはX-ナイフでは適応とならない比較的大型の腫瘍もコリメーターを変化させることで対応可能であり, 定位的治療が可能となった.また, 強度変調放射線治療(intensity-modulated radiotherapy; IMRT)は光子線を用いて, 照射門(5〜9門)ごとにコリメーターを変化させることにより, 照射野の形状, 照射線量を変化させ, 照射野内の線量に強弱の重み付けが可能となる画期的治療法であり, 造影域と浸潤部で治療線量を変更することが有利と考えられえる悪性グリオーマではその成績が期待される.粒子線には「ブラグピーク」と呼ばれる大きな特徴があり, 極めて尖鋭な線量分布が得られる.粒子線のうち, ことに炭素線は重粒子線ともいわれ, 光子線や, いま一つの粒子線である陽子線と比較しても相対的生物効果が大きく, 放射線(光子線)抵抗性腫瘍に対してもより効果的と考えられる.硼素中性子捕捉療法(BNCT)は細胞生物学的にtargeting可能な唯一の放射線治療であり, 腫瘍に選択的に取り込まれた^<10>B原子に中性子線が捕獲されたときに生じるα線とLi反跳核により, 腫瘍が選択的に破壊される.これらの治療法はそれぞれ最近研究が飛躍的に進み, 悪性脳腫瘍に対しても, 近い将来にその成果が期待される.

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© 2006 日本脳神経外科コングレス
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