脳神経外科ジャーナル
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Dysembryoplastic Neuroepithelial Tumor(DNET)を伴った内側側頭葉てんかんの1例
藤本 礼尚山添 知宏榎 日出夫岡西 徹横田 卓也近土 善行山崎 まどか山本 貴道
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2011 年 20 巻 10 号 p. 755-760

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抄録

はじめに:腫瘍性病変を伴った症候性てんかんのてんかん焦点は,腫瘍そのものではなくその周囲もしくは関連したネットワークに存在する.腫瘍自体を切除しても,てんかん発作は消失しない.腫瘍性病変が存在し複雑部分発作二次性全般化を呈した症例に対し,焦点診断を行った後に治療を行った.対象と方法:19歳,右利き男性.13歳発症.「頭全体が気持ち悪くなる感じ」,deja vuの後に一点凝視,流涎,口部自動症,20%程度で二次性全般化を起こす.頻度は4〜5/週.カルバマゼピン(CBZ),トピラメート(TPM)を服用し,過去にバルプロ酸(VPA),フェノバルビタール(PB),クロバザム(CLB)を経験し薬剤抵抗性であった.右側頭葉を主座としたガドリニウムでごく軽度にheterogeneousに造影される腫瘍性病変があり,鑑別診断として,(1)胚芽異形成性神経上皮腫瘍(dysembryoplastic neuroepithelial tumor:DNET),(2)神経節膠腫(ganglioglioma),(3)Low grade astrocytomaと考えた,本症例に対し,脳波,長時間ビデオ脳波,高密度脳波,神経心理,Wadaテストの後右前頭側頭開頭で硬膜下電極を用い焦点診断を行った.結果:脳波は右側頭部を中心としたpolymorphic deltaのfocal slowing,長時間ビデオ脳波は右前頭側頭部からの律動性6〜7Hz theta活動で始まる複雑部分発作であった.高密度脳波でも右側頭葉に焦点が推定され,神経心理,Wadaテストで左半球言語優位と判断した.硬膜下電極では右内側側頭葉起始と判断した.以上から右海馬扁桃体切除+腫瘍全適術を行った.病理所見ではDNETで術後発作は完全消失した.結語:腫瘍性病変を伴った症候性てんかんは,病変そのものに焦点が存在してはいない.良性腫瘍により二次的にてんかん発作を起こしている場合には,主訴がてんかん発作であれば,非侵襲的焦点診断ならびに硬膜下電極を用いて焦点の絞り込みを行い,腫瘍とてんかん発作焦点両方の手術を行う必要がある.

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© 2011 日本脳神経外科コングレス
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