2017 年 26 巻 9 号 p. 682-687
症例は76歳女性で, 突然の頭痛と嘔吐でSAHを発症した. 頭部CTで左後頭蓋窩に優位なSAHを認めたが, 画像検索を繰り返し行うも, 脳動脈瘤など原因確定ができなかった. Day 9に脳血管撮影を再検し, 右AICA遠位部に動脈瘤をようやく確認した. Day 14に手術を行ったが, 動脈瘤は内耳道内に完全に埋もれており, 内耳道を開放したが不完全なclippingに終わった. 根治のため後日AICA trappingを行い, 右聴力の低下はあったものの脳梗塞の出現なく経過した.
内耳道内前下小脳動脈瘤はきわめてまれであり, その治療はclippingやtrappingが従来行われてきた. 術後聴神経障害を合併することが多く, 改善の見込みはほぼない. 本症例でも同様であった. 過去の報告例を交え, 本脳動脈瘤の特徴と治療方法について言及した.