脳神経外科ジャーナル
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原著
中枢神経原発悪性リンパ腫 (PCNSL) に対するRMPV (リツキシマブ, メトトレキサート, プロカルバジン, ビンクリスチン) 療法の治療成績―期待と課題―
チャリセ ルシュン大岡 史治平野 雅規棚橋 邦明若林 俊彦
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2018 年 27 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

 中枢神経原発悪性リンパ腫 (PCNSL) は, 現在の標準治療法である全脳照射 (WBRT) を併用した大量メトトレキサート (HD-MTX) 療法により治療成績の改善を認めるものの, いまだ治癒困難な疾患である. また, 治療関連白質脳症の出現も大きな問題となっている. これらを解決するために, HD-MTXに他治療薬を併用し化学療法を強化する方針へ変化しつつある. 当院では2002~2010年までDeVIC療法 (デキサメタゾン, エトポシド, イフォスファミド, カルボプラチン), 2010~2014年までHD-MTX単独療法および2014年より減量全脳照射 (23.4Gy) 併用RMPV療法 (HD-MTX, リツキシマブ, プロカルバジン, ビンクリスチン) を行ってきた. 本稿ではこれらの治療成績を比較しRMPV療法の有用性と問題点について考察した. HD-MTX療法は, DeVIC療法と比べて, 初期治療の奏効率が著明に低かった (DeVIC 95% vs. HD-MTX 50%). 一方, RMPV療法では86% (7例中6例) で初期治療により完全奏効 (CR) が得られた. さらに, RMPV療法群の1年および2年生存率はそれぞれ100%および75%であり, HD-MTX療法群およびDeVIC療法群より高かった. また, RMPV療法後23.4Gyで治療された症例ではHD-MTX療法と比べて白質病変の出現が少ない傾向にあった. 有害事象については, グレード4以上の好中球減少の頻度はHD-MTXと同程度であった (p=0.186) が, 2コース後に重症消化管出血にて治療を中止した1例を認め, 十分な注意が必要である.

 RMPV療法は従来のHD-MTX治療法と比べ奏効率, 生存率ともに良好な傾向にあり, 白質脳症も減少する可能性がある. ただし, 化学療法中に重篤な副作用がみられることもあり, 厳格な全身管理が必要である.

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© 2018 日本脳神経外科コングレス

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