1994 年 3 巻 3 号 p. 230-234
今回われわれは,高血圧の既往を有する51歳男性で,きわめて短期間(26日間)で右被殻に脳内出血を繰り返した症例を経験した.初回出血,再出血とも右被殻部に限局した出血であり,神経症状も軽症であった.また,脳血管撮影上血管奇形などを認めず,血液生化学的所見にも異常を認めなかった.われわれが文献を検索したかきりでは,同一部位に脳内出血を繰り返した症例は本邦では7例を認めるのみであり,比較的稀な現象であると思われた.症例をまとめたところ特徴として,(1)初回出血,再出血とも小出血が多く,神経症状も軽いこと,(2)出血部位は被殻が多いこと,があげられた.また,今回初回出血から再出血にかけて経時的CT, MRIにて興味ある所見を得たので,再出血の経過について考察を加えた.