脳神経外科ジャーナル
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特集 脳神経外科の研究とキャリアデヴェロップメント
Comfort zoneから一歩踏み出すことで見える世界―北米臨床留学―
髙見 浩数
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2021 年 30 巻 4 号 p. 295-301

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抄録

 明治時代, 開国直後に岩倉具視らが欧米を歴訪して国家の基礎を学んだ頃とは異なり, 現代ではわれわれは多分野で世界の最前線にいて, 医療分野でも留学は必要に迫られてはいない. 日本は世界で最も便利で不自由のない国の1つであり, 内向き志向になり得る. 一方ノーベル賞受賞者の大多数が海外での研究経験をもつことは一考に値するし, 日本と世界の優劣・差異は無数にあり, 百聞は一見に如かず, はいつの時代でも当てはまると思われる. また所属する医局などの状況にもよるが, 人生の中での留学機会はあったとしても大抵一度きりで, それを使う使わないは人生の選択である.

 留学には臨床系・研究系に大分され, 意義と準備が異なる. 私は前者をとり, 世界一とされる米国メイヨークリニックに2年間, 世界有数の覚醒下手術を行うカナダトロント大学に1年間クリニカルフェローとして過ごした. この中で北米の構築化・分業化された仕事や無駄のない考え方, 独立した医者-患者関係, 北米最高クラスのエリートたちの仕事の取り組み方などに接し, 人生の参考になる経験を得た. 何より3年間で多くの国々の人々と接し, 価値観を擦り合わせネットワークを築いたのは大きな財産だと思う. 失うものを恐れず得るものの大きさに期待を抱き, 短期間でも海外で過ごすことの意義を考える機会になればと思う.

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© 2021 日本脳神経外科コングレス
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