認知心理学研究
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原著
作動記憶容量が帰納的規則推論に与える影響に関する実験的検討
松室 美紀三輪 和久
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2014 年 12 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

本研究の目的は,作動記憶容量(Working Memory Capacity; WMC)と帰納的規則推論課題の成績の関連,および,そのような関連がどのように生じるのかを明らかにすることである.以下の三つの仮説の検討を行った.多くのWMCに関する先行研究から,仮説1:WMCが大きい参加者のほうが規則発見の成績が高い,が導かれた.さらに,WMC得点は情報の保持量と注意のコントロールを反映するという観点から,二つの仮説を挙げた.仮説2:WMCが大きい参加者のほうが,WMCが小さい参加者に比べ,事例の比較を積極的に行う.仮説3:WMCが大きい参加者は,検討中の要因に持続的に注意を集中できるが,WMCが小さい参加者は,ほかの要因に注意を奪われ注意の集中が続かない.眼球運動計測を用いた実験の結果,第1,第2の仮説は支持されたが,第3の仮説は支持されなかった.この結果から,WMCと規則推論の成績の関連は,検討要因ヘの注意の持続力ではなく,情報の保持量の差異に基づいて生じることが示唆される.

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© 2014 日本認知心理学会
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