2008 年 5 巻 2 号 p. 107-117
バックグラウンドミュージック (BGM) が,自由再生における文脈依存効果を生じさせるか否か,また生じさせる場合どのように生じさせるかを,2つの実験によって調べた.総勢160名の大学生が,20個の単語を符号化した.符号化の最中には,4種類のうちの1曲をBGMとして流した.符号化した単語の30秒後の自由再生時には,符号化時と同じ(同文脈条件)あるいは異なる(異文脈条件)BGMを流した.実験1は,学習意図×反復回数×文脈の効果を検討し,実験2は,偶発学習条件における提示速度×文脈の効果を検討した.BGM依存効果は偶発学習条件で生じたが(実験1・2),意図学習条件では生じなかった(実験1).BGM文脈依存効果が生じた偶発学習条件において,1回提示後では有意な文脈依存効果が生じたが,2回提示後では生じなかった.また,4秒提示後と8秒提示後の両方で,有意な文脈依存効果が生じた.本結果は,(a) 自由再生におけるBGM文脈依存効果が意図学習では生じにくいこと,(b) 反復や提示速度など項目強度の規定因が,BGM依存効果の大きさを増加させないことを示している.