抄録
本研究はランダムな音列の記憶が長期に保持されるか否かを間接再認手続き(寺澤・太田,1993)を用い,集団実験によって検討した.間接再認手続きは2つのセッションから構成される.第2セッションは一般的な再認実験であり,リスト学習とそのリストに関する再認判断が求められ,第1セッションで音列を聴いた影響がその再認成績に基づき検討される.セッション間には4週間(実験1)と14週間(実験2)のインターバルが入れられた.実験参加者は各セッションにおいて提示される音列のそれぞれについて好意度評定が要求された.第2セッションのみ,好意度評定実施後,直前の好意度評定で聴いた音列かどうか判断することが要求された(間接再認テスト).実験の結果,第1セッションに出現した音列に対するヒット率と虚再認率が,出現していない音列に比べ2割から3割程度高くなることが明らかとなった.このことから,符号化の難しい聴覚情報が潜在記憶として長期に保持される可能性が示された.教育的な応用可能性が議論された.