2009 年 6 巻 2 号 p. 133-141
本研究では,潜在記憶課題である単語完成課題における環境的文脈依存効果の生起について,符号化時と検索時の刺激呈示モダリティを変化させる手続きを用いて検証した.実験では,符号化時には40単語を視覚呈示もしくは聴覚呈示した.約10分後,符号化時と同じ実験室もしくは異なる実験室において単語完成課題を実施した.単語完成課題はすべて視覚呈示された.その結果,符号化時と検索時の刺激呈示モダリティが異なる条件においてのみ,環境的文脈依存効果の生起が確認された.このことから,単語完成課題におけるフラグマント刺激のような,環境的文脈よりも効果的な手がかりが刺激呈示モダリティの変化によって利用できないときには,単語完成課題においても環境的文脈依存効果が認められることが明らかになった.