認知心理学研究
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原著
動作を説明する文が視覚刺激異同判断に及ぼす影響:知覚的表象はどのような言語的要素によって活性化されるのか
望月 正哉内藤 佳津雄
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2010 年 8 巻 1 号 p. 11-21

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抄録

本研究では,行為文のどのような言語的要素によって知覚的表象が自動的に活性化されるのかについて視覚刺激の異同判断課題を用いて検討した.参加者は特定方向(前後方向/上下方向)への対象物の動きを説明する行為文を読んだあとに,大きさがわずかに異なった二つの視覚刺激が,もしくは異なる位置に提示された二つの視覚刺激が同じものかどうかを判断した.その結果,文で説明された動きと一致する視覚刺激(一致条件)のほうが,一致しない視覚刺激(不一致条件)よりも反応時間が有意に短いことが示された.しかし,実験1において,図形刺激が提示されたときは一致条件と不一致条件の反応時間に有意な差はみられなかった.さらに,実験2においては,一人称の文と三人称の文のどちらを読んだ場合でも,一致条件の反応時間に有意な差がみられなかった.これらの結果から,行為文を理解する際には知覚的表象が自動的に活性化されること,その表象は動詞句に含まれる対象物とその動きに関する情報によって活性化されることが示唆された.

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© 2010 日本認知心理学会
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