論文ID: 2510
本研究では,陰謀論信念と疑似科学信念に影響を与える認知的要因を日本人参加者で検討した.反証的証拠に対するバイアス(BADE)課題を用いた2つの調査を通じて,認識論的に疑わしい信念(ESB)と信念更新プロセス,認知的熟慮性,被害妄想傾向,科学的推論能力の関連を調べた.スウェーデン人参加者を対象とした先行研究(Acar et al., 2022)と異なり,信念更新の困難さ(EI)と陰謀論信念の関連は日本人参加者では認められなかった.こうした結果は,文脈を重視して情報を統合する全体論的思考スタイルなどの,文化的な認知処理傾向を反映している可能性が考えられる.初期情報の過信(PRB)は文脈依存的な関連を示し,中立的文脈では陰謀論信念と,感情的文脈では疑似科学信念と関連した.一方で,科学的推論能力は両タイプのESBを一貫して抑制し,普遍的な保護要因として機能した.被害妄想傾向は陰謀論信念とのみ選択的に関連したのに対し,疑似科学信念とは関連せず,異なるESBタイプには異なる認知メカニズムが存在することが示唆された.分析的思考(CRT)は主に科学的推論能力の向上を介して間接的にESBに影響した.これらの知見は,ESBの形成・維持が文化的認知スタイル,文脈要因,認知能力の複雑な相互作用に依存することを実証的に示している.