2007 年 60 巻 7 号 p. 421-425
71歳男性. 胃癌検診で異常を指摘され当院受診, 精査で進行胃癌, 術前の大腸内視鏡検査で横行結腸に粘膜下腫瘍を, 腹部CT・USで胆嚢結石症を認めた. 以上より胃切除術, 胆嚢摘出術, 横行結腸切除術を施行した. さらに, 肝S5に直径8mmの白い小結節を認めたので胃癌の転移を疑い肝部分切除も追加した. 病理組織学的検査で横行結腸は粘膜下層に小さい虫体の死骸を中心に著しい炎症性細胞浸潤を認め, これをとりまいて肉芽反応がcapsule状に形成されていた. 虫体は構造よりアニサキスと同定し大腸アニサキス症と診断した. 肝の結節性病変は出血壊死をとりまいて線維化が目立つ瘢痕結節で寄生虫感染の瘢痕と考えられた. 大腸アニサキス症は稀で, 全アニサキス症の1%以下とされている.