直腸癌術後の縫合不全の危険因子として,男性,腫瘍の位置などの患者因子のほか,吻合部への過度の緊張や血流障害などの手術因子が挙げられる.手術操作においては,特に直腸の切離,吻合部腸管の状態および吻合部のintegrityの確認に細心の注意を払う.メタアナリシスにおいては,低位前方切除術における予防的ストーマは縫合不全の発生頻度と再手術率を有意に減少させる一方で,予防的ドレーンの意義はないとされている1).縫合不全発生時の対策には,非手術·保存的治療,CTガイド下ドレナージ,stoma造設,ハルトマン手術や吻合部切除再吻合が含まれるが,治療方針は縫合不全の程度,付随する炎症や膿瘍の範囲の評価,および有効なドレナージの有無により決定する.直腸癌手術に際しては,縫合不全発生に関わる因子の充分な評価,手術時における最大限の予防,そして発生時の迅速かつ適切な対応を常に心掛けることが重要である.