日本大腸肛門病学会雑誌
Online ISSN : 1882-9619
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特集 主題 II:痔瘻術後の再発を考える
IV.再発摘出痔瘻組織より見た痔瘻再発機序の考察
宇都宮 高賢八尾 隆史柴田 興彦山邉 素子川野 豊一
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2009 年 62 巻 10 号 p. 866-871

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抄録

痔瘻根治手術を受け再発し来院してきた39症例と,膿瘍切開を繰り返し来院してきた19症例の摘出瘻管について検索した.再発痔瘻では,膿瘍併存型痔瘻を示した症例は74%あり,膿瘍切開を繰り返した症例では63%に認めた.再発症例のうち組織検索可能例は22例あり,膿瘍切開を繰り返した症例は9例あった.術後痔瘻再発例に肛門腺を認めた症例は14%あり,膿瘍切開再発症例では56%に認めた.組織学的所見は双方ともに被膜様線維化組織に囲まれた好中球とリンパ球,形質細胞を主体とした膿瘍と周囲線維組織間を拡散する炎症性細胞の浸潤を認めた.脂肪組織と筋肉組織内は線維化が著明でリンパ球,形質細胞と少数の好酸球の慢性炎症性細胞の浸潤を認めた.このことから再発の原因は,一次口の位置を誤認して手術した場合と線維化組織に囲まれた分岐あるいは併存する炎症拡散性の膿瘍を遺残させた場合と考えられた.

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© 2009 日本大腸肛門病学会

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