日本大腸肛門病学会雑誌
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特集 主題 I:痔核診療のすべて
I.痔核治療の歴史的変遷
三枝 純一三枝 直人三枝 純郎
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2010 年 63 巻 10 号 p. 813-818

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抄録

Hemorrhoidの記述は古代よりあり,人類の長い痔核との苦闘の歴史が偲ばれる.加持祈祷や貼付薬,無麻酔下痔核焼灼などの時代を経て,欧州で1800年代半ばに様々な化学物質による痔核への注射が試行されたが,腐蝕剤は施行後出血から死に至らしめることすらあった.ほぼ同時期に手術的治療法が興隆し今もって硬化注射と手術治療は痔核治療の両輪である.歴史的には英国のSt. Mark's病院創立と結紮切除法の開発が転換点であろう.本邦では江戸時代の鎖国政策により近代医学の導入が遅れたが,幕末になると西洋医学が徐々に輸入され外科の始祖の華岡青洲,本間棗軒などが痔核の治療を行った.明治になると腐蝕注射が席巻し,その後本国の英国ではとうに廃れたWhitehead法が本邦で全盛期を迎えた.漸く昭和50年頃以降より結紮切除法が標準手術とされ,現在では(ゴム輪)結紮に加えPPH法や明礬が主剤の硬化剤なども用いられている.

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© 2010 日本大腸肛門病学会

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