2010 年 63 巻 10 号 p. 881-887
自験例139例のCrohn病肛門部病変の長期経過を検討した(平均観察期間178.2カ月).最終的には129例,92.8%に肛門部病変を合併した.長期経過の中でいずれの病変も増加し,なかでも痔瘻,膿瘍の増加が顕著で複雑多発化の傾向がみられた.外科治療としては,痔瘻根治術に比べseton法ドレナージの経過が良好であり,痔瘻,膿瘍に対して第1に選択すべき治療法と思われる.肛門部病変に起因した人工肛門造設例は29例,20.9%で,14例の直腸切断術のうち4例が癌合併であった.若年で発症するCD患者の長期経過の中で肛門部病変はQOLを左右する重要な因子であり,QOLの保持を第1に,癌合併も含めた長期経過を考慮した治療法の選択が肝要である.