64 巻 (2011) 6 号 p. 408-413
「便秘」を訴える患者に,強い刺激性下剤が処方されて下痢を来している症例を散見する.本研究では,(1)健常成人へのアンケートと大腸通過時間から,一般の人のいう「便秘」がどの程度の状態を示すものか解明し,(2)さらに便秘症患者の治療において弱い刺激性下剤によるコントロールを行い,大腸通過時間を指標として評価した.健常成人女性30名,および便秘症例10名を対象とし,前者には「自分は便秘と思うか」などのアンケートと全大腸通過時間,後者には弱い刺激性下剤として,カサンスラノールとジオクチルソジウムスルホサクシネート(D. S. S.)の合剤を投与し,排便コントロール前後の大腸通過時間を測定した.測定は,1,2,3日目に放射線不透過マーカー(Sitzmarks)を服用,4,7日目に腹部単純写真を撮影,Metcalfらの方法で全大腸通過時間および大腸各区域(右側,左側,S状結腸直腸)通過時間を検討した.
(1)全大腸通過時間は,自覚(+)・便秘(+)群6名110.4h,自覚(+)・便秘(-)群12名40.8h,自覚(-)・便秘(-)群12名15.0hで各群間に有意差があった.(2)投薬前後で全大腸(100.8hから59.4hへ短縮),右側結腸,左側結腸通過時間は有意に短縮し,S状結腸直腸通過時間は延長したが有意差はなかった.一般の人が「便秘」という場合,便秘の定義には合致しないが,自覚症状のない人よりは長い通過時間を有する一群があることが示された.また便秘の治療においては,通過時間を正常化する必要はなく,ほどよく通過時間を短縮することで良いコントロールが得られることもあり,アントラキノン誘導体に代表される刺激性下剤は弱いものを少量から使うことが肝要であることが示された.