2014 年 67 巻 5 号 p. 347-352
転移性痔瘻癌に対して局所切除を行い,長期生存が得られた2例を経験した.
症例1は58歳,男性.直腸S状部癌に対し,直腸切除術(D3郭清)を施行した.診断は,tub1>tub2,pSE,pN1,cM0,fStage IIIaだった.8年前より痔瘻があり,術後8ヵ月目に肛門周囲に硬結が出現し,生検にて痔瘻癌と診断した.症例2は65歳,男性.下部直腸癌に対して直腸低位前方切除術(D3郭清)を施行した.診断はtub1>tub2,pMP,pN0,cM0,fStage IIであった.術後9ヵ月目に肛門に硬結を自覚した.肛門に腫瘤を認め,生検で痔瘻癌と診断した.いずれの症例も腫瘍と瘻孔を含めた局所切除術を行った.2例とも先行する直腸癌に類似した組織像を示し,抗サイトケラチン抗体,粘液形質などの免疫染色法から直腸癌の転移性痔瘻癌と診断した.症例1は術後8年3ヵ月,症例2は術後5年10ヵ月無再発生存している.