抄録
家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis:FAP)において最も配慮すべき病態は大腸癌の合併であり,大腸癌発生の予防的観点から大腸(亜)全摘術が標準的な外科治療として位置づけられている.現在,大腸(亜)全摘術はその術式においていくつかの選択肢があり,それぞれの特性を考慮しつつ症例の病態により選択されている.また近年,大腸外科手術の領域において腹腔鏡手術の発展は目覚ましく,FAPに対する大腸(亜)全摘術においても腹腔鏡手術が適応される場合も増えてきている.予防的大腸切除の第一の目的である癌発生を予防するという根治性の確保,術後排便機能を含めた安全性,整容性・医療経済などの社会的観点,これらすべてを考慮したうえで各症例に最適な術式を選択することが重要であると思われる.