2016 年 69 巻 7 号 p. 387-391
今回われわれは,比較的急性に経過し,大腸亜全摘術が奏効した慢性特発性大腸限局型偽性腸閉塞症の1例を経験したので報告する.症例は41歳,女性.5年前から便秘症状を認めていたが治療歴はなく,他に基礎疾患はなかった.腹痛・腹部膨満を主訴に近医を受診.大腸閉塞症と診断され,当院に救急搬送となった.腹部CT検査にて偽性腸閉塞症と診断し,保存的加療を行うも,腹部症状の増悪を認めたために第3病日に大腸亜全摘術を施行した.術後,排便障害は軽快し,良好な経過が得られている.慢性特発性大腸限局型偽性腸閉塞症は腸管に器質的閉塞・狭窄や原因となる基礎疾患がないにもかかわらず,大腸のみに腸閉塞様の症状を繰り返す疾患であるが,本症例のように急性の経過をとる場合があり,迅速な初期治療が肝要で,大腸亜全摘は有用な術式と考えられた.