2017 年 70 巻 2 号 p. 81-87
症例は50歳女性,主訴は右鼠径部腫瘤.肛門管から下部直腸にかかる隆起性病変と肛門周囲皮膚に全周性の硬結・発赤を認めた.生検で肛門管内腫瘤から高分化腺癌,肛門周囲皮膚発赤部から上皮内に浸潤する癌細胞を認めた.精査にて右側方/鼠径リンパ節転移,肛門周囲皮膚へのpagetoid spreadを伴う肛門管腺癌と診断した.術前全身化学療法と術前化学放射線療法の後,腹腔鏡下直腸切断術,右側方/鼠径リンパ節郭清,会陰創皮弁形成術を施行.術後病理所見で癌細胞は認めず,pathological complete responseだった.Pagetoid spreadを伴う肛門管腺癌はまれであり確立した治療法はなく,予後不良である.本症例は術前治療が非常に有効であり,術前病期によっては前治療を含めた集学的治療も考慮するべきである.