2017 年 70 巻 6 号 p. 428-434
原発性腹膜癌は,腹腔内の播種病変を主体とする比較的稀な疾患である.卵巣漿液性腺癌と組織像が類似していることを特徴とし,多くは発見時に癌性腹膜炎を呈している.症例は78歳の女性で,近医で施行した腹部超音波検査で骨盤内腫瘤を指摘され,精査目的に当院に紹介となった.CTでダグラス窩に充実性成分を含む嚢胞性腫瘤と肝腫瘍を認めた.開腹所見では,癌性腹膜炎は認めず,腫瘍は直腸,子宮頚部に浸潤しており,ハルトマン手術と子宮付属器合併切除術を施行した.病理組織学的診断は,直腸,子宮頚部に浸潤する原発性腹膜癌で,直腸間膜内リンパ節に転移を認めた.術後化学療法を行い経過観察としたが,肝腫瘤は退縮し無再発生存中である.骨盤内腫瘤を認めた場合,本疾患を念頭におき,廓清範囲を含めた慎重な術式選択が肝要と考えられた.