2018 年 71 巻 5 号 p. 228-234
肛門部子宮内膜症は稀な肛門疾患で,分娩時に子宮内膜組織片が会陰切開創に移植することで発生する.今回,肛門部子宮内膜症の5例を経験した.初診時の年齢は30~43歳で,主訴は肛門の腫れと痛みであり,最終分娩から初診まで2~16年経過していた.全例に肛門前方の圧痛を伴う硬結を認めたが,皮膚の発赤や黒色変化を伴う皮膚隆起型が3例,皮膚表面には変化を認めない皮下硬結型は2例であった.肛門管超音波検査では低エコー腫瘤と描出され肛門管との連続は認めなかったが,皮下硬結型では肛門括約筋への浸潤を認めた.腫瘤切除手術は4例に行われたが,2例に再発を認め,ホルモン治療の追加が行われた.本症の診断に肛門管超音波検査は参考となりうる可能性がある.本症の皮膚隆起型と皮下硬結型では,理学的所見や肛門括約筋への浸潤度に違いを認めた.本症の治療は年齢,挙児希望,自覚症状,括約筋浸潤の程度などに基づいて選択するのが望ましい.