日本大腸肛門病学会雑誌
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症例報告
卵巣嚢胞として長期経過観察されていた虫垂癌右卵巣穿通の1例
山本 隆嗣松田 恭典西澤 聡
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キーワード: 虫垂癌, 高CEA血症, 卵巣穿通
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2018 年 71 巻 7 号 p. 296-301

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抄録

症例は81歳,女性.74歳時に帯下と腹部膨満感で婦人科受診していた.CEAが9.3ng/mLと上昇していたが,上部・下部内視鏡検査で異常所見なく,画像検査で右卵巣嚢胞が指摘され,経過観察されていた.経過観察中にCEAは上昇,腹部鈍痛も加わり,外科受診となった.紹介受診時はWBC:12,150/μL,CEA:13.8ng/mLで,画像検査で卵巣嚢胞周囲の炎症所見を認め,肥厚虫垂が嚢胞に接していた.虫垂炎を疑い開腹手術を施行した.肥厚虫垂の先端が卵巣に穿通しており,虫垂切除と右卵巣切除を施行した.病理検査で粘膜内限局の高分化型腺癌を認め,卵巣嚢胞は無構造の粘液貯留腔であった.術2年後現在,CEAは正常化し癌の再発はない.自験例は卵巣嚢胞による高CEA血症と考えたために術前に虫垂癌を正診出来なかった.また,虫垂癌が卵巣に穿通して腹腔内に播種しなかった点でも,まれな症例であったと考えられる.

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© 2018 日本大腸肛門病学会

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