抄録
症例は56歳の男性.前立腺癌に対し,経恥骨式前立腺全摘出術を施行した.その際に直腸の前壁を約1.5cm損傷し,直腸修復術および回腸人工肛門造設術を施行した.術後1ヵ月に施行した膀胱造影では膀胱尿道吻合部の尿道背側に連続した直腸が描出され,直腸尿道瘻と診断した.3ヵ月間の保存的加療を継続したが瘻孔は残存したため,手術目的に当院紹介となった.直腸尿道瘻に対して薄筋弁を用いた修復術施行の方針とした.経会陰的に瘻孔部の切除施行後に,右薄筋弁を採取し,腹腔鏡による経腹的操作を併用することで瘻孔部に完全に右薄筋弁を充填することが可能であった.術後合併症なく経過し,術後8日目に退院となった.術後4ヵ月目に施行した膀胱造影で瘻孔閉鎖を確認し,同月に回腸人工肛門閉鎖術を施行した.術後2年5ヵ月現在再発なく経過している.経会陰的到達法に腹腔鏡による経腹的操作を併用することで低侵襲かつ,より確実に瘻孔部に薄筋弁を充填することが可能であると考えられた.