内視鏡手術は大腸がん外科領域に確実に浸透しているが,直腸がんに対する内視鏡手術は今なお難易度が高く,根治性への一定懸念が示唆されている.近年ではこのような手技的課題解決を目指し,ロボット手術とともにTrans anal Total Mesorectal Excision(TaTME)が注目されるようになり,世界的に認知されている.
TaTMEは腫瘍学的側面と機能温存の両面において,従来の直腸がん手術を凌駕する可能性がある.特に剥離層の選択を肛門からの近接視野で施行できる点において大きなメリットがある.現在,欧米では腹腔鏡下TMEとTaTMEのランダム化比較試験(COLOR III試験,GRECCAR 11試験)が計画されており,TaTMEの有用性が検証されることが期待されている.しかしながら,特徴的な解剖学的認識やラーニングカーブが課題として挙げられ,安全に施行するための教育システムの整備が急務である.