2019 年 72 巻 4 号 p. 198-202
基底細胞癌は顔面や頭頚部などの日光に当たる部分に好発するが肛門部には稀である.症例は83歳の男性で5年前からの肛門部の腫瘤と分泌物にて当院を受診した.初診時,肛門縁より1cm右外側に4cm大の腫瘤を認め,表面は潰瘍形成を伴っていた.肛門管超音波検査で4cmの低エコー腫瘤を認めたが,肛門管との連続や肛門括約筋への浸潤は認めなかった.MRI検査では肛門縁から右臀裂にかけて4cm大の分葉状の充実性腫瘤を認めた.生検で癌細胞を認めた.手術は拡大切除と後大腿皮弁による再建手術を一期的に行った.手術摘出標本の病理診断は基底細胞癌であった.術後経過は良好で肛門機能やQOLに影響はなかった.肛門近傍の潰瘍形成を伴う高齢者の基底細胞癌に拡大切除と後大腿皮弁による再建手術が有用であった.本症の診断および治療方針の決定に肛門管超音波検査が参考になった.