2019 年 72 巻 7 号 p. 468-471
症例は52歳男性.下血・血圧低下を認め救急搬送された.来院時出血性ショックを呈し,腹部造影CT検査では横行結腸肝弯部に出血源が疑われた.直ちに血管造影を施行したところ右結腸動脈末梢からのextravasationを認めた.循環動態が安定せず選択的な塞栓は困難と判断し,辺縁動脈でコイル塞栓し循環動態は安定した.再出血と塞栓に伴う腸管虚血が危惧されたため同日結腸右半切除術を施行した.術後経過は良好で第7病日に退院した.病理組織学的にコイル塞栓を行った近傍の憩室内に露出血管と血栓を認め出血源と判断した.大腸憩室出血は時に大量出血を伴い止血処置に難渋する.出血性ショックを呈した憩室出血症例に対して血管造影で出血源の同定と可及的なコイル塞栓で循環動態を安定させ,速やかに外科的切除を行うことで出血源の同定と腸管虚血のリスク回避が同時に得られ,双方の長所を生かした治療選択肢となり得る可能性が示唆された.