2021 年 74 巻 2 号 p. 55-60
症例は86歳女性.腹痛を主訴に紹介受診し,血液検査で炎症所見の上昇,腹部CTで虫垂腫大,周囲脂肪織の炎症を示唆する所見を認め,腹腔鏡下虫垂切除術を行った.切除標本は65mm×24mmの腫大した虫垂で,N/C比の高い腫瘍細胞を認め,免疫組織化学染色ではchromogranin A,synaptophysin,CD56の神経内分泌マーカーが陽性を呈し,神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma;NEC)の確定診断を得た.術後再検査で多発肝転移を指摘したが,Best supportive careの方針となり,約3ヵ月後に永眠された.
虫垂NECの症例報告はわれわれの調べた範囲では自験症例を含め,11例ほどと非常に少数で稀だが,治療ガイドラインが確立されておらず,診断・治療成績向上には症例集積が必要である.