日本大腸肛門病学会雑誌
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大腸癌に対する術中補助化学療法の検討
特に漿膜下投与法について
山口 一紘
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1980 年 33 巻 3 号 p. 201-209,288

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抄録

大腸癌の術中補助化学療法は諸施設で種々検討されているが,未だ最も有効とされる投与法は確立していない.著者は正常雑種成犬にMMC溶液を,1)結腸漿膜下,2)支配動脈内,3)末梢静脈内,4)腹腔内,5)結腸管腔内に投与し,胸管リンパ液,門脈血,末梢血を採取してMMC濃度を比較した,さらに大腸癌症例に漿膜下投与を施行し,リンパ節内MMC濃度を測定検討した.胸管リンパ液内MMC濃度は漿膜下投与群が最も高く,門脈内濃度は各投与法間に差がなかった.また臨床例漿膜下投与群の転移陰性リンパ節では高濃度のMMCを検出した.従来のcontrolled studyの検討からも大腸癌の術中補助化学療法はリンパ系に主眼をおくべきだと考えられる.その意味からも,大腸漿膜下投与法は,リンバ行性転移,血行性転移,さらに吻合部再発等の3つの転移形式に対して有効であり,術後再発防止に著明な効果が期待できる術中補助化学療法であると推察された.

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