虚血性大腸炎のX線診断は,経時的変化,潰瘍を中心とした形態的変化の相違,形態的変化の程度の相違の3点を考慮する必要がある.二重造影法を施行した自験例5例に文献的考察を加え検討した.急性期のX線所見は,腸管の狭小化と伸展不良,特徴的な拇指圧痕像,鋸歯状辺縁で,これらの所見はほぼ7日前後で消褪し,その前後から,二重造影法で潰瘍像がとらえられる.潰瘍は,縦走潰瘍の所見を呈するものと,多発性の不整形潰瘍の所見を呈するものに大別されるが,前者が多く,虚血性大腸炎の,ある程度特徴的な所見と考えられる.軽度のひだ集中をともなう縦走潰瘍瘢痕の正面または側面像と共に,偏側性の狭小化,特徴的な嚢形成が4週間以内に急速に増強する,多発性不整形潰瘍の所見を呈するものでは,嚢形成は少数かあるいは形成されない.もちろん,上記所見は,虚血の程度によって,様々でまた短期間に消褪したり,,6カ月以上にわたって固定化したりする.