1981 年 34 巻 6 号 p. 640-645
虚血性大腸炎の診断に際して臨床的,放射線的,または内視鏡的に類似の病態が多数存在し,鑑別は必ずしも容易ではない.虚血と炎症の程度により形成される病像は異り,起始からの期間がさまざまな修飾をもたらしている.従って診断に際して血管系に侵襲を及ぼす指景疾患を明らかにする必要があり,注意深い検索が必要である.
病勢に従って類似の所見を呈する疾患の鑑別を行うことが望ましい.時には臨床歴や理学的所見,一般検査などが有用なことがある.内視鏡的には顕著な所見(浮腫性変化,縦走潰瘍,不規則ビラン,瘢痕,狭窄など)に注目し,周囲の変化を観察することが重要である.血管造影は必ずしも有効でなく,生検組織診も非特異的であるので,急性腹症が否定された場合には直ちに注腸X線または大腸ファイバースコープ検査を行い,可及的早期の像から経過を追求し,その変遷を観察することにより確診へと導くものと思われる.