1984 年 37 巻 3 号 p. 273-278
肛門内圧検査法はヒルシュスプルング病の診断や排便機能評価に今や欠かせない検査法となっている.今回私たちは直腸肛門奇形の病型診断に肛門内圧検査法を導入し, その有用性を検討した.症例は腟前庭瘻を有する女児2症例で, 従来より行われているゾンデによる検索, 瘻孔造影および瘻孔の長さ測定では中間位のrecto-vestibular fistulaなのか, 低位のano-vestibular fistulaなのかの鑑別は困難であった.肛門内圧検査で, 両者とも正常の直腸肛門反射および肛門管律動波が認められ, 腸内神経叢, 内肛門括約筋の存在が生理的に証明され, 低位ano-vestibular fistulaと診断することができた.
症例1ではcut back手術, 症例2ではanal transplantationが行われた.このように肛門内圧検査で直腸肛門反射, 肛門管律動波が認められれば低位, 認められなければ中間位あるいは高位とclear cutに診断を下すことができ, 腟前庭瘻ばかりでなく, 他の外瘻を有する症例にも病型診断の一助になるであろう.