1984 年 37 巻 5 号 p. 522-528
術前, 直腸癌の浸潤程度およびリンパ節転移の有無を検索する目的で, 直腸癌59例, 直腸カルチノイド3例の計62例を対象に体腔内走査の経直腸的超音波断層法を施行した.本法は病巣部を直接描出するため高い解像能の画像が得られ, low echo levelの主病巣の描出率は96.5%であった.骨盤内臓器, 直腸固有筋層を指標として3群に分類した壁深達度診断では, 86.3%の正診率を示した.また類円型のlow echo level像で描出される転移リンパ節の診断では, 74.4%の正診率を得た.これらの成績より, 本法は従来の検査法で困難とされていた術前の直腸癌壁深達度診断, リンパ節転移の有無の判定が可能であり, 直腸癌の手術術式の決定において重要な検査法であると考えられた.また直腸癌術後の経過観察においても定期的に本法を施行することにより, 局所ならびに骨盤内再発の早期発見が可能であることも示唆された.