1984 年 37 巻 5 号 p. 590-596
近年, 各種大腸疾患に伴う大腸粘膜の杯細膜粘液組成の変化が指摘されている.しかしながら正常大腸粘膜の粘液組成に関する検討は必ずしも十分ではない.著者らは大腸内視鏡検査時に盲腸, 上行結腸, 横行結腸, 下行結腸, S状結腸, 直腸より正常大腸粘膜を採取し, その杯細胞粘液組成を粘液組織化学的に詳細に検討し以下の結果を得た.
正常大腸杯細胞粘液は酸性粘液が主体であり, 酸性粘液のうちsulphomucinとsialomucinを含有するが主にsulphomucinを含有していた.部位別には盲腸, 上行結腸では他の部位に比してsialomucinを含有する比率が若干高い傾向にあった.さらにsialomucinではシアル酸の側鎖に, 隣接する水酸基を持たないO-Acylated sialomucinが多く認められたが, 右側結腸では, 隣接する水酸基を有するsialomucinを含有する例の割合が左側結腸に比して多く, 左右大腸で粘液組成に差異が認められた.