1985 年 38 巻 3 号 p. 276-281
発病以来38年を経過した成人型慢性ITPに進行直腸癌を合併した1例を経験した.本症例には,20年以上に及ぶステロイド剤の投与と,47歳の時脾摘がすでに行われている.術前血小板数は2.1×104⁄mm3.と減少していたため,1981年Imbachらの報告した方法に従い,400mg/kg/day3日間のintact-γ-globulin大量投与を行ったところ,術当日には22×104⁄mm3.と著しい血小板数の増加が認められ,進行直腸癌に対する根治的切除が可能であった.長期にわたるステロイド剤投与のため,肺炎と右側腹部皮下感染の併発をみたが,術後23日目退院し,術後1年目の現在,元気に社会復帰している.多量のγ-globulin投与は外科治療が必要なITP患者の術前管理法として極めて有用であると考えられた.