日本大腸肛門病学会雑誌
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肛門管原発悪性黒色腫の長期生存例の1例
及川 隆司安部 厚憲田村 元長谷 泰司安達 武彦工藤 正純後藤 洋一長谷川 正義
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1985 年 38 巻 3 号 p. 282-288

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抄録

64歳男に発生した肛門管原発悪性黒色腫に対して,腹会陰式直腸切断術(以下APR)+そけいリンパ節郭清術を施行し,術後10年5カ月再発の徴候もみられない長期生存例を得た.
肛門管悪性黒色腫の5生率は,諸家の報告によると3.8~12%と皮膚原発に比べてかなり悪く,5年以上の長期生存例は,現在まで欧米13例,本邦5例の合計18例に過ぎない.
年齢は25~71歳で,女性に多い傾向がある.痔核と間違われ易い早期症例は局所切除でも5生例がみられるが,進行例ではAPRが行われている.2群リンパ節であるそけいリンパ節転移がみられる症例でも,APR+そけいリンパ節郭清術をして5生例がみられ,充分な郭清をすることにより長期生存も期待できる.しかし5年以上の晩期再発例が5例(27.8%)にもおよび,さらに3例(16.7%)に異時性重複癌が発生しており長期にわたるfollow upが必要である.

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