症例は,58歳女性で全身倦怠感を主訴に来院した.22歳時の虫垂切除術を最初に44歳の糞瘻切除術まで計4回の開腹手術の既往があった.外来での血算では,2カ月蘭にへモグロビン値が9.0g/dlから5.5g/dlへと著明な貧血の進行が認められた.貧血精査の目的で入院,消化管を中心に検査を進めた.上部消化管内視鏡検査では異常なく,注腸X線検査でも右側結腸の変形以外,特に異常は認められなかった.経管小腸造影を施行したところ,bilind loopで放置しておいた上行結腸と回腸との間に内瘻が形成されており,その境界部位に潰瘍性病変が認められた.貧血は同部位からの失血と考えられ,潰瘍性病変の切除を目的に右半結腸切除術を施行した.切除標本ではblind loopの上行結腸に2型の夫腸癌があり,この部位で回腸と内瘻が形成されていることが判明した.本例はblind Ioopに発生した大腸癌で,blind Ioopおよび回盲部切除後の大腸癌発生に関して若干の文献的考察を加え報告した.