ヒトの回盲部における腸内容輸送のメカニズムは,同部位の運動の検査方法が限られ,また,その検査の施行の困難さのために,今日まで十分解明されているとはいえない.また食餌刺激のヒト腸管の輸送運動に及ぼす影響も,その詳細は明らかではない.すでに著者は,本学会誌(40巻18-26頁1987年)において,ヒト大腸の内容輸送運動を観察する大腸シンチグラム検査の検査法と分析方法について発表した.そこで,今回は8例において,回腸末端部をも含めた大腸シンチグラム検査を施行して回盲部の輸送運動を検討し,また,5例において大腸シンチグラム検査中の被検者に試験食を摂取させ,食餌刺激の腸管輸送運動に及ぼす影響を見た.その結果,回腸末端部の輸送運動に続く大腸の大蠕動が見られ,また食餌刺激の開始直後より生じた回腸末端部と全結腸の輸送運動が15-30分間認められ,その運動は,腸管が不応期にある時には生じないことが判明した.