日本大腸肛門病学会雑誌
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炎症性腸疾患の家族内発生
樋渡 信夫中嶋 和幸山崎 日出雄熊谷 裕司山下 和良森元 富造
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1987 年 40 巻 7 号 p. 889-893

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抄録

炎症性腸疾患の家族内発生の頻度と臨床像を明らかにする目的で,自験例について検討した.潰瘍性大腸炎296家系(1954年~87.6)のうち,潰瘍性大腸炎の多発は8家系(2.7%)に認めた.このうち6家系は兄弟例,2家系は母子例であった.発症年齢の近似は2家系,発症時期の近似は3家系,病型の類似は3家系に認められた。家族内発症例と"非家族例"との比較では臨床像に差はなかった.クローン病に関しては,85家系中3家系(3.5%)に家族内発生を認めた.1家系は母子例,2家系は兄弟例であり,3家系ともそれぞれ罹患範囲が同じであった.同一家系に3例以上の発症や,クローン病と潰瘍性大腸炎の混在を認めた家系はなかった.
炎症性腸疾患の家族内発生が高頻度にみられたことは,偶然によるものではなく,遺伝的要因と環境要因が病因に強く関与していることが示唆された.

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