1988 年 41 巻 4 号 p. 395-399
vancomycin,metronidazoleで好中球減少を呈したnonantibiotic-associated pseudomembranous colitisの1例を報告した.症例は74歳女性,10年前より糖尿病.昭和61年11月,抗生物質服用などの誘因なく,突然頻回の下痢出現,某医受診,全大腸に多数の黄白色小結節がみられた.偽膜性大腸炎の診断の下,metronidazole,vancomycinの併用で一時軽快した.しかし,服薬中止7日目に再び下痢出現,偽膜の確認により再発と診断され当科に転院し,再度vancomycin, metronidazoleを投与した.好中球数は,最初6,723/mm3.(WBC:7,500/mm3.),初回の治療後次第に減少し,再発時治療中には368/mm3.(白血球数2,300/mm3.)になった.本症例のneutropeniaが,両薬剤のいずれに起因したかは断定できなかった.vancomycin,あるいはmetronidazoleによる好中球減少は欧米では稀に報告されているが,本邦では本症例が最初である.