1989 年 42 巻 6 号 p. 1012-1017
大腸癌肝転移巣の術中超音波像を病理組織学的所見と対比した. 超音波像を内部エコー像と辺縁エコー像に大別し, 病理組織学的には転移巣の壊死の状態をI型~IV型に分類し, また腫瘍周囲の炎症細胞浸潤や結合織増生についても検討し, 以下の結論を得た. (1) 内部エコー像は壊死の状態で変化する. すなわち, 均一な内部エコー像は, 壊死を伴わないI型や, 中心部に壊死を伴うIII型の両者に出現しやすく, その壊死巣はviableな癌細胞をほとんど認めない比較的均質な組織像を呈した. (2) 不均一な内部エコーは, 2cm以上の大きな転移巣か, あるいは中心部に壊死を伴ったIII型に出現しやすく, その壊死巣はviableな癌細胞と壊死に陥った癌細胞が混在する不均一な組織像を呈した. (3) 腫瘍辺縁の低エコー像は, III型に出現しやすく, 腫瘍周囲の炎症細胞浸潤や結合織増生には関係がなく, 残存するviableな癌細胞に相当するものと考えられた.