1989 年 42 巻 6 号 p. 1109-1112
昭和50年1月から昭和63年8月までに当科で切除した直腸癌151例のうち, 早期直腸癌16例 (10.6%) を対象とし, 検討を行った. 早期直腸癌の形態を見ると全例とも隆起型であり, 陥凹型はなかった. 術前深達度診断は, 直腸指診, 注腸造影検査および大腸内視鏡検査で行い, 2つ以上の検査で一致をみたものをその深達度とした. 深達度術前診断と病理組織学的診断とを対比してみると, 総合的にM´と診断した9例中7例がmであり, SM´と診断した7例中6例がsmで, 正診率は81%であった. 個々の診断法別に見ると, 直腸指診で正診率78%, 注腸造影検査では, 75%, 大腸内視鏡検査では, 63%であり, 総合的に診断したほうが正診率が高かった. 組織学的には, 14例が高分化腺癌, 2例が中分化腺癌であった. リンパ節を検索できた5例とも転移を認めなかった. 脈管浸襲は, m癌にはまったく認められず, sm癌2例に認められた.