日本大腸肛門病学会雑誌
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III 女性の痔瘻
荒川 廣太郎
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1990 年 43 巻 6 号 p. 1063-1069

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抄録

女性の痔瘻は男性に較べてどのような点が異なっているかを調べてみると, まず女性の罹患頻度は男性の約5分の1である.乳児では女性はほとんど皆無に等しい.年齢別分布, 痔瘻の病型分類, 手術術式などは男女間で有意の差が認められなかった.それにもかかわらず, 解剖生理学的理由によって, 女性の痔瘻のうち肛門の前方, すなわち会陰部にかけて拡った症例では手術に際して特別な配慮が必要である.痔瘻発生におけける男女の性差を考えてみるに, 肛門腺および導管の病理組織学的所見のうち, 肛門腺にて生産されると思われるムチン粘液性の物質は, 男性ホルモン依存性かも知れない, そして性ホルモンのバランスにより分泌が促進され, 導管開口部の局所の炎症や狭窄によって, 腺腔内の内容欝滞を生じ化膿性変化も加わって痔瘻の初期病態が発生すると想像される.

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