1991 年 44 巻 1 号 p. 16-21
絞扼型大腸癌の数量的定義化を試みるとともにその特徴ならびに治療上の留意点を明らかにするために臨床病理学的検討を行った.絞扼型大腸癌の定義は癌の環周度が4/5周以上で,かつ癌の横径が肛門側正常腸管横径の50%以下のものとした.1978年から1986年までに経験した大腸癌初回手術例446例中,絞扼型大腸癌は25例5.6%であった.臨床的特徴としてはイレウスを呈し緊急手術となったものが過半数を占めた.病理学的特徴としては壁深達度高度,静脈侵襲高度のもの,腫瘍割面の肉眼分類で浸潤型が多く,間質反応では線維化は強いものの炎症性細胞浸潤は軽度であった.治癒切除を行い得ても再発率は43%と高率で,5年生存率も38%と予後不良の傾向にあった.治療としては十分なリンパ節郭清を含む広範な術式はもとより,術後の化学療法・免疫療法等の集学的治療の必要性が示唆された.