日本大腸肛門病学会雑誌
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Enzyme Immunoassay法による糞便中蛋白(Hemoglobin, Albumin, Transferrin, α1-Antitrypsin)の同時測定法とその臨床的意義
杉森 清孝
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1992 年 45 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

消化管悪性腫瘍,炎症性腸疾患などの消化管疾患では腸管内への慢性出血や蛋白漏出が認められる.そこで,各種消化管疾患を対象にenzyme immunoassay法により糞便中のhemoglobin,albumin,transferrin,α1-antitrypsinを同時測定し,定量的評価および糞便中蛋白のパターン分析からこれらの病態を検討した.蛋白測定方法は,96穴マイクロプレートに4種類の蛋白に対する各抗体を固定させ固相プレートを調製した後,各Wellに検体を分注し一次反応を行った.ついでalkaline-phosphatase標識抗体による二次反応後,Kind-King法に準じ発色させ比色定量した.4種類の糞便中蛋白の4℃,25℃,37℃における経時的変化をみるとα1-antitrypsinが最も良好な安定性を示した,各疾患についてこれら4種類の糞便中蛋白のパターンを分析するためにレーダーチャートを応用したグラフで図式化すると,小腸病変を主体とするクローン病などではα1-antitrypsinが特に高値を示し偏りのあるパターン図が得られ,潰瘍性大腸炎のように広範な病変を,あるいは大腸癌のように局所的であっても高度の病変を大腸にみるものでは4種類の蛋白がともに高値を示すパターンが認められ,小腸病変と大腸病変の部位鑑別に有用と思われた.さらに,全例についてα1-antitrypsin消化管クリアランスを算出すると血清albuminと負の相関性(r=-0.5756,P=0.0001)が認められ,とくにクローン病での病勢把握に有用であった.一方,潰瘍性大腸炎では糞便中蛋白の4種類ともに病勢の指標になりうると思われた.

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